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Selfishly

Selfishly

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(注!!)このお話は、18禁となります。
     暗くて、ロイ鬼畜でエロしかない話になりますので、
     お読みになる方は、それでも構わないと言う方のみ
     お願い致します。
     読まれてからの文句は、なしでお願い致します。
     それでもOKな方のみ、下にスクロールして下さいませ。
     


























      『忘却の時間』p1

薄暗い穴蔵ののような部屋の中は、独特の臭気が蔓延している。
干からびた樹木の臭いや、饐えた生物の臭い
黴臭いのは、部屋自体がじめじめしているからだろうか。

「頼んでいた物は・・・」
黒いコートに身を包み、こんな照明の弱い部屋には不必要な濃い黒のサングラスをかけた男が、
目の前に座る小さな老婆に、そう話しかける。

「ああ、ここに」
さしだされた手は、部屋の中に干してある木の根のように干からびており、
老婆の年齢を語っている。
「効果は?」
「人にもよるが、6時間程だね」
そう語りながら、粗末な木箱の蓋を開けてみせる。
その中には、小さな小瓶が5つ、割れないように厚手の布を敷いた中に
並んでいる。
「これを服用すれば、薬が効いている間の事は記憶には留まらず、
 綺麗さっぱり忘れちまうさ。
 脳に直接影響して、強制的に夢うつつの状態になる。
 違うのは眠り込まずに、意識も感覚も保てるってとこさ」

「人体に後遺症はでないだろうな?」
「ああ、全く残らないよ。 本人は覚えてない夢をみたようなものさ。
 服用してから一度眠りに落ちた後に起こせば、効いてる時間に
 次に眠ちまえば、薬が切れて、
 記憶と共に薬の成分も、体内で中和されてお終いさ。
 それとこちらが、媚薬だね。
 即効性はあるが、持続は出来ないから、精々持って2~3時間というところかの」
「こちらも?」
「ああ、一定のホルモンの分泌を促すだけの物だから、
 時間がくれば体内で調整されて元通りになる。
 依存性も常用性もないから、身体には何の影響も無い」
木箱の横に置いた袋の中には、数個の錠剤が入っている。

「わかった。 支払いを」
男が持ってきた鞄の口を開け、中に納まっていた札束を無造作に並べていく。
相当額の札束にも驚く事無く、老婆は並んだ札を確認し終わると、
机に置いていた木箱と袋を押しやるようにして、男に渡す。
男は黙って受け取ると、それらを大切に内ポケットにしまい込み、
小さく頭を下げると、クルリと向きを返して歩き出す。

「口止めはしないのかね」
面白がっているような口ぶりで、そんな事を言ってくる相手に、
男は振り返りもせずに。
「私のような若造が、貴方に?
 愚問だな、私とて命は惜しい」
それだけ返すと、それっきり立ち止まらずに部屋を出て行く。

部屋に一人残った老婆は、枯れ木の音のような乾いた笑いを零す。
「ホッホッホッ。 さすが切れ者と名高い男じゃの。
 なかなか度胸も据わっておるわ。気に入った、気に入ったが、
 もう来ん事を願ってやろうかの、お前さんの為に」

人の記憶を操作する薬に、媚薬とくれば、欲した人間が何に使うかを
察することは難しくない。
が、あれほどの男が使うと言うなら、余程のことで、かなりの相手なのだろう。
ここに通うという事は、それが必要な状況を強いられていると言うことだ。
なら、老婆の尊厳を認めた対応の礼に、もう来なくてもよいようにと
願ってやっても悪くないだろう。
この世の中、悪巧みをする輩は掃いて捨てるほどいる。
そして、そういう人間に限って、保身の為には礼儀もルールも守ろうとしない馬鹿が多いのだ。
日の差さない闇の中にも、秩序を守るルールが存在する。
守られているからこそ、闇の世界も存続するのだ。
それを乱す者など、駆除されてしかるべき虫けらと変わりない。
そして、そうしてきたからこそ、この老婆が闇の世界で生き残ってこれたのだから。
「まぁせいぜい頑張ることじゃな。
 記憶は頭だけでするものじゃあない。
 身体から馴らすのも1つの手じゃわさ」
そう呟いた後、、愉快そうな哂い声を室内に木霊させ続けた。

***

「いきなり呼び出すから何かと思えば、酒盛りかよ?」

退出後、取りも直さず呼び出しに走って来てみれば、
中では既に寛いだ様子の、ふざけた上司がソファーにだらしなく凭れかかって座っている。

「まぁそう言うな。 君が婚約者持ちになれば、
 そうそう付き合わせる事も出来なくなるからな、前祝だ、前祝」

そう言って自分の前の椅子を勧める相手に、エドワードはげんなりした表情を浮かべるが、
指し示さされた椅子へ、素直に腰かける。
この上司の我侭・強引なのは今に始まった事ではない。
最初に顔を合わせた日を入れれば、そろそろ10年を過ぎようとしているのだから。

「全く・・・。ちょっとはこっちの都合も聞けってえの。
 今日だって、打ち合わせを切り上げて来たってのにさ」

そう言いながら、テーブルに並ぶ酒瓶から一番高そうな物を取って、
手酌で注いで飲み始める。

「早いものだな、婚約パーティーは明後日だったか・・・」

「ん・・・。 俺も正直、早い気がしないでもなんだけどさ」

照れて困ったように笑う表情は、昔と然程変わらず幼いままだと言うのに。

「押し切られたか、彼女に?」

苦いものを飲み込むような感覚は、酒を呷る事で流し込む。

「まぁ、そうなんだけどさ。 
 何でそんなに急ぐかなぁ? 俺まだ、実感湧かないってのが本音なんだけど」

困惑の中にも、明るい表情が浮かぶのは、
彼自身、それを厭うほどではないという事なのだろう。

エドワードとアルフォンスが、彼らの念願を叶えて早数年が経った。
そのまま軍を去ると思っていたエドワードが、弟の体調が戻るのを待って
軍に入隊したときには、驚きもしたが、喜びのほうが遥かに勝りもした。
彼の事を思えば、軍に戻らせる事が良いことではないと思いつつも、
またこれから一緒に過ごせる日々・・・手放さなくてもよい時間が得れたことは
ロイの抱いていた仄暗い想いを喜ばせる事にもなった。

それから数年、ロイの元で働き始めたエドワードと、幾つもの事件を解決し、
何度も窮地を掻い潜ってきた。
そうした年月が、ロイとエドワードを、上司と部下と言うよりも、
盟友に近い位置まで押し上げてきたのだった。
エドワードの能力と、優秀な部下達のサポートの中、
ロイは着々と地位を上げていき、最年少の将軍職に就き、
数年後には最年少の大総統に昇るだろうと言うのが、
今では軍内部に留まらず、世論の見方だ。

「が、驚いたよ。 あの君が婚約とはね・・・」

ロイはその日の衝撃を忘れる事が出来なかった。

「中将・・・、実はお願いしたい事があるんだ」

改まってそんな事を彼が言ってくるのは珍しく、ロイは書類の手を止めて
視線を向ける。
エドワードはここ数年で、立派な青年になった。
背こそ、望むようには高くはならなかったが、すらりとした肢体はバランスよく、
幼かった顔も、凛々しく麗しい青年のそれになっている。
言動にも威厳も具えた大人の対応が出来るようになってきてからは、
自信溢れた才気ある青年として、文句の付けようも無い。
ロイはここ最近よくする、眩しいものを見るような目で彼を見つめる。

「そのぉ、ちょっとプライベートでお願いしたい事があってさ」

「プライベート? 君が? 
 珍しい事もあるものだな」

エドワードは余り我侭を言わない。
元々自分に無欲だった彼だから、願いが叶った今、
我を通すような必要がなくなってしまったのだろう。
そんな彼が珍しく願いを口にするのなら、ロイに出来ることは
何でも叶えてやりたいと、その時は本当に思ったのだ。
「なんだい? 私に出来ることなら、力を貸すが?」
そう微笑みながら言ったロイに、緊張した面持ちを緩めて
エドワードが言った言葉を聞くまでは・・・。

「実は・・・、そのぉ・・・」

言い難そうな様子ではあるが、表情は決して暗くないから、
休暇の希望だろうか?などと思ってみた。
忙しいロイに付き合って、エドワードも休日返上で働いている。
が、元気になったとは言え、離れて暮らしているアルフォンスの事が
心配でないわけはないだろうから、様子見がてら故郷に帰りたいのかも知れない。

「どうしたんだい、君らしくもない。
 構わないさ、君の突拍子もない行動には、いつも驚かされてきたから、
 今更何を口に仕様が、たいして動じないさ」

それは唯の軽口のつもりだった。
言い難そうにしている彼に、遠慮するなと言うつもりの。
まさか、本当にロイの度肝を抜くようなあんな事を、伝えてくるとは
思ってもみなかったから・・・。

「ん、じゃあ言うけどさ。
 婚約する事にしたんだ、俺」

その瞬間、思考が真っ白に染め上げられた。

「で、大佐には後見人として長かっただろ?
 だから、保護者として立ち会ってもらえないかと思って」

「き・・・み・が?」

「うん取りあえず、内輪だけ集めて、婚約披露をしようって事になってさ。
 あっちも両親とか兄弟とか来るだろ?
 俺にはアルしかいないから、ここは中将に頼もうかって事になってさ」

その後の事は、正直何を話し、どんな表情を自分が浮かべていたのか覚えてない。
ただ嬉しそうにして出て行ったエドワードの様子に、剥がれそうな仮面が有効だった事だけ
理解できた。

その後すぐさま、内密にエドワードの相手を探り、
彼の下宿屋の娘だった事が判った。
働き者の明るい娘で、そこらでは評判の器量よしの娘らしい。
そして、どことなく彼の母親の面影に似ている気がするような・・・。

その後何度か打ち合わせと称して、娘や家族にも会った。
下宿やを営んでいるだけあって、面倒見の良さそうな夫婦に、
親切な兄弟たち。 その家族に愛されて育った事がわかる娘は、
気質も良く、優しい思いやり溢れる女性の美徳を兼ね備えた妻に最良な相手だろう。
・・・そして、両親と兄達の躾けも良かったのだろう。
異性との性交渉もまだどころか、付き合いすらしたことのない淑女だ。
綺麗なエドワードに似合いの、穢れない女性。
ロイはにこやかに笑いながら、その表情の下ではドス黒く渦巻く憤怒と嫌悪で
その女性を何度穢してやろうと思ったことか・・・。

悩み続けていても時は過ぎていく。
エドワードの婚約披露パーティーまでの間、時は過ぎていき、逆に近づく日を呪いながら、
ロイは計画を立てた。 
女性を穢したところで、エドワードの心が揺らぐはずが無い。
どころか、優しい彼の事だ、逆に彼の決意を強くするだけだろう。
ならば、彼を穢してしまえばよいのだ。
そうと知られずに、彼の身体に自分の刻印を刻む。
その甘美な妄想に囚われたように、ロイは裏の情報を使って、
自分の計画が実現する手立てを組み立てていく。


「でさ、式には皆も呼ぶだろ?
 今からそのリストだなんだって大騒ぎなんだぜ。
 婚約したって、式までは後何年もあるって言うのにさぁ」

目尻を赤く染めながら話しているエドワードに相槌を返しながら、
ロイの頭の中では、全く違う想像に耽っていた。
組み敷いた体を己の欲に染め上げる妄想を・・・。
快感で泣き叫び、自分を欲する彼の痴態を・・・。
捻じ込み突き上げて、己の劣情で穢される彼を・・・。

「まぁそう不満ばかり言うもんではないよ。
 女性にとっては、一世一代の舞台だからね、時間をかけるのは悪いことじゃない」

偽善で塗りつぶした言葉と表情で告げながら、ロイはさも楽しそうに
エドワードの話を聞いてやり、酒を薦めていく。
エドワードは酒に強い。 幼い頃から旅をしていたせいか、外見には合わずとも
口にする機会が多かった所為だろう。
酔い潰すまで行っては困るが、明日に酒の所為に出来る位には
飲ませておくほうが、後々良いだろう。

食事もさせずに飲ませていれば、酔いが回るのも早いだろう。
グラスが空く事無く注いで飲ませていくうちに、エドワードの呂律も怪しくなってくる。

「れもさぁー、あんらより早く行くってのも、申し訳ないよなぁ~」

酩酊始めた彼の言葉に、ロイも大きく頷き返す。

「本当だよ。 子供子供とばかり思っていたが、まさか私を越すとはね。
 君にはしてやられた気がして仕方ない」

苦笑で本音を吐露しても、今のエドワードの状態では、気づけないだろう。

「あはは~、なんかあんらに勝った気がするぅ」

「そうかい、全く人の気も知らないで・・・。
 なら、祝ってやろうか」

ロイは部屋に備え付けの冷蔵庫に行き、この時の為に冷やしておいた
とっておきのシャンパンを持ち出してくる。

「君の祝いの為に用意した物だ。
 遠慮せず飲みなさい」

ポンと小気味良い音を響かせて抜かれた瓶を、酔いながらもその価値はわかるのか、
エドワードが驚いたようにしげしげと眺めている。

「また・・・凄いもの出してきたな・・・」

「ああ、この種の中では最高の部類だな。 しかも、この年は当たり年だったから、
 価値としては倍増する品だろう」

ロイは酒に見合うグラスを持ち出してきて、エドワードに惜しげもなく注いでやる。

「君の幸福に。 そして、私の願いの達成に」

うっすらと哂うロイの表情が、暗く歪んでいたとしても、
今のエドワードには気づく事も出来ないだろう。

「ん、ありがとう。 あんたには世話になってばかりで」

しんみりとした口調で、そう礼を伝えてくるエドワードに、
ロイは小さく頭を振った。

「「乾杯」」

澄んだ音が合わされたグラスからたなびいて流れていく。
口当たりの良い酒を、エドワードが美味しそうに飲み干していく。

「上手い~!」
「それは良かった。 が、これ以上飲みすぎはいけないよ」

瓶に手を伸ばすエドワード手の平をを、やんわりと押さえる。

「えっ~、折角開けたんじゃんか、飲んじまおうぜぇ」

そう強請るエドワードに、ロイは笑いながら首を横に振る。

「君はもう飲み干したんだから、これ以上は必要はなくなるさ」

「?」

ロイの意味深な言葉に、首を傾げるエドワードを見つめながら、
ロイはゆっくりと待つ。

「そう言えば、聞いてみたかったんだが。
 君は彼女と関係を持ったのかな?」

さらりと言われた言葉が、エドワードの頭の中で理解されるのには
少しの時間を要した。

「はっ? えっ、ええー!」

酒のせいだけでなく赤くなった顔を見つめながら、ロイはゆっくりともう一度問う。

「どうなんだい? 彼女とは寝たのかと聞いてるんだ」

ゆっくりと噛んで含めるように伝えると、目の前の青年は、重くなる瞼を必死に開こうとしながら
小さく首を振る。 「まだ・・・」と呟きながら。

寝入り始めたエドワードを注意深く見つめながら、ロイは嬉しそうに哂う。
「そうか、なら初めては私と言う事だな」

ゆっくりと慎重に抱き上げながら、ロイは軽い足取りで歩き出す。
エドワードの女性関係は、調べ上げてある。
元から恋愛には疎かったのが幸いして、奥手できた彼には
そんな経験を積むようなチャンスが回ってこなかった。
だから、油断していたというのもあったのだ。
まさか、彼の下宿先でとは、灯台下暗しだ、全く。









 



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